持ち家は負債?持ち家否定論の間違いを訂正してみた【住宅論】
こんにちは、やんともです。
中古戸建てを購入しマイホーム生活を始めました。
『住居』を考える上で永遠のテーマとなっているのが「持ち家か賃貸か」の議論です。
最近は資産管理に対する意識の向上から、持ち家を否定し賃貸を勧める意見が多いように感じます。
しかし、持ち家否定派の意見の中には間違った考えも多く見受けられますので、本日はそのような間違った持ち家否定論を訂正してみたいと思います。
ただ、私は決して持ち家のみを肯定し賃貸を否定している訳ではありません。
持ち家にすべきか賃貸にすべきかは人によって違いますし、実際に賃貸が向いている人は多くいると思います。
ここではあくまで「間違った持ち家否定論」に対してツッコミを入れるだけです。
1.持ち家を買ってはならない理由とは
1)家は負債?
2)家は貸している時だけ資産
3)持ち家はマイナスのキャッシュフロー
4)資産価値が落ちるから買わない
5)修繕費や固定資産税で持ち家は高くつく
6)賃貸で我慢する
7)新築はすぐに価値が落ちるから
8)結局持ち家を買ってはいけない理由はなにか
2.住み替えリスクがあるから買うべきではない?
1)住み替えリスクはあっても必ずしも賃貸が有利ではない
2)賃貸だから失敗しないとは言えない
3)賃貸派優勢の違和感
3.最後に
1.持ち家を買ってはならない理由とは
1)家は負債?
持ち家否定論で最もよく聞く言葉が「家は資産ではなく負債」という言葉です。
某有名書籍、某有名芸能人、某有名インフルエンサーなどが揃って同じ言葉を使っています。
しかし家は負債という言い方は正しいのでしょうか。
そもそも簿記的に言えば、家は資産で負債に該当するのは住宅ローンです。
家(土地・建物)⇒資産
住宅ローン⇒負債
価値が1億円であろうと、100万円であろうと、資産は資産です。
持ち家否定論者が言う「家は負債」は、家の資産価値が住宅ローンの負債額を下回っている状態を比喩的に「家は負債」と言っているだけです。
この言葉を初めから使っている本当にお金に詳しい人はこれが比喩的表現であると理解していると思いますが、最近の流行りに乗ったお金系YouTuberには理解していない人もいるのではないかと思います。
また、資産価値が負債額を下回るかどうかは家によります。
負債額以上に価値のある家だっていくらでもあると思いますし、そもそも現金で購入された家は負債ゼロです。
確かに日本中を見れば、負債額が資産価値を上回るケースが大半でしょうが、家が必ず負債過多かのような表現は間違っていると思います。
2)家は貸している時だけ資産
「家は負債」とくっついてよく言われるセリフが「家は貸している時だけ資産」です。
「何言ってんの?」と思います。
自分が住む家について持ち家か賃貸かの話をしているのに、家を収益のために使う話をするのは論点がズレてますよね。
買った家を人に貸して、さて自分が住む家はどうするの?
持ち家がいいの?賃貸がいいの?
話しがスタートに戻っていますね。
また「家は貸している時だけ資産」と言うと、賃貸に出している時以外で資産価値が負債額を上回ることがあり得ないように聞こえますが、前章でも話した通り資産価値が負債額を上回るケースもあり得ます。
また、賃貸に出していれば必ず資産(プラスのキャッシュフロー)になるかと言うと、そうとも限りません。
ローンの返済額以上の家賃で借り手がついていなければプラスのキャッシュフローにはなりません。
よってここも間違いです。
3)持ち家はマイナスのキャッシュフロー
上2つに続けて言われるのが「持ち家はマイナスのキャッシュフロー」ということです。
これも完全なミスリードです。
確かに住宅ローンの返済はマイナスのキャッシュフローです。
では賃貸の住人が支払う家賃はプラスのキャッシュフローなのでしょうか?
いいえ、当然マイナスのキャッシュフローです。
1)で家は資産・住宅ローンは負債と言いましたが、家賃は何か?
「費用」です。
家(土地・建物)⇒資産
住宅ローン⇒負債
家賃⇒費用
持ち家については、少ないながら資産>負債となるプラスのケースもあり得ます。
しかし家賃はどうがんばっても100%マイナスのキャッシュフローにしかなりません。
なぜ、さも賃貸がマイナスのキャッシュフローではないような話し方をするのか、最大の疑問です。
4)資産価値が落ちるから買わない
「資産価値が落ちるから買わない」と言いますが、逆になぜ資産価値がキープされなければ買ってはいけないと決めつけるのでしょうか?
住居費はそもそも住居の本質的価値に対して支払うものです。
住居の本質的価値とは、雨・風・寒暖を防ぎプライベートな安息の場を与えることであり、更にそこに駅や市街地から近いという立地の良さや、広さ・設備の便利さなどにより付加価値が加わります。
それは家賃であっても持ち家(住宅ローン)であっても同じことです。
「この場所にこの広さで住むために1ヶ月10万円の対価が必要」というなら、それは10万円支払わなければいけないことであり、長年住んだ後にキャッシュバックを求めるのは本来は筋違いです。
「いやこの話は感情論であり、何よりも資産が優先だ。」と言う人は田舎の山奥で野宿をすればいい話。
「もちろん住居費なんだけど、なるべく資産も残るようにする。」という話であれば、家賃は払い終わって1円も返ってきません。
持ち家であれば、購入時5,000万円だったのが30年後に5万円の価値になろうが、5万円は返ってきます。
1円も返ってこないよりマシだと思います。
ただし上記は、同じ家に長期間住み続ける前提の話です。
短期間で住み替えることを考えるならば、資産価値がキープされる家を購入しなければいけませんし、そもそも賃貸がよいという話になります。
ここは7)で改めてお話しします。
5)修繕費や固定資産税で持ち家は高くつく
長期間同じ家に住むとしても、「持ち家は高くつく」と言われることがあります。
持ち家は家本体の取得費用(住宅ローン)だけでなく、固定資産税や修繕費なども発生すると言われます。
これについても疑問に思います。
例えばここに5,000万円の家があり、35年住み続けるとします。
戸建てでもマンションでも新築でも中古でもどちらでもいいです。
持ち家でフルローンで購入する場合、35年で総額いくらかかるか。
本体5,000万円+金利900万円+火災地震保険料150万円+固定資産税500万円+修繕費500万円⇒総額7,050万円
(適当に計算したので内訳は気にしないでください。)
ではこの家を自分で買わず、誰か他の大家さんに買わせ自分は賃貸として住む場合どうなるか。
家を購入した大家さんは基本的に持ち家と同じだけのお金がかかります。
ローンの金利も火災地震保険料も固定資産税も修繕費も、全て発生するので基本的に同じ7,050万円が発生します。
大家さんはそれを35年掛けて取り返そうとすると、7050万円を35年×12ヶ月で割った金額を家賃の最低金額としなければなりません。
すると家賃は最低でも16万7千円です。
しかもこれだけでは大家さんの利益はありませんし、空室リスクも考えていくらか上乗せして家賃を設定します。
仮に月1万3千円上乗せして月18万円の家賃にした場合、35年住み続けると総額7,560万円になり持ち家の総額を上回ります。
大家さんがもっと短期間で回収しようとした場合、もっと高い家賃設定になり、更に高い出費になります。
同じ条件で持ち家と賃貸を比較するということはこういうことだと思います。
持ち家は固定資産税や修繕費を払わなければならないと言いますが、賃貸の場合も家賃に含めて間接的に払っています。
加えて、大家さんの利益や管理会社の管理費、空室リスクなどで持ち家より多くの額を払うことになります。
「いや、大家さんは自分が住む訳ではないので必要最低限の修繕しかしない!」というのであれば、持ち家の場合も35年持たせるだけの最低限の修繕だけすればよいだけの話す。
それで35年経って家が住めない状態まで劣化しても、賃貸と比べて損はないはず。
ただここの理論については私もあまり自信がありません。
なぜなら、賃貸の家賃設定についてよく知らないからです。
もし間違っていたらどなたか指摘して頂きたいです。
6)賃貸で我慢する
5)と重なる部分もありますが、「持ち家は高いから、賃貸で我慢しなさい。」とよく言います。
なぜ賃貸が安くて持ち家が高いという認識なのでしょうか?
なぜ賃貸が我慢の対象なのでしょうか?
5)で説明した通り、同じ家に住むのであれば持ち家も賃貸も同じ費用がかかります。
むしろ賃貸の方が高いです。
長期間住むなら尚更、持ち家はいつか払い終わりますが、賃貸は払い終わることはありません。
でも「持ち家を買ったことで月々の住居費が上がった。」と皆言います。
さて、今まで住んでいた家とこれから住み始める家の住居費を比べることは、持ち家VS賃貸の比較になっているでしょうか?
ここでの本質は持ち家を買うついでに広い家にしたことです。
住居費が上がるのは、
賃貸 ⇒ 持ち家
ではなく、
狭い家 ⇒ 広い家
設備の整っていない家 ⇒ 設備の整った家
古い家 ⇒ 新しい家
立地の悪い家 ⇒ 立地の良い家
です。
広い家に引っ越せば賃貸であろうが住居費が増えるのは当たり前です。
「節約のために賃貸で我慢しなさい。」ではなく「節約のために狭い家で我慢しなさい。」が正しく、
「持ち家を買ったから家計が苦しくなった。」ではなく「広い家に引っ越したから家計が苦しくなった。」が正しいです。
7)新築はすぐに価値が落ちるから
確かに新築は鍵を開けた瞬間に価値が数百万円落ちると言います。
それは、新築価格にはハウスメーカーの営業費などが乗っていてそれは家本体の価値として残らないからです。
なので、1)で述べた「家の資産価値<ローンの負債額」という状況になり易いのは事実です。
しかし、「だから持ち家は買わない方がよい」というのは必ずしも言えません。
まず、そもそもこの話は「新築か中古か」の議論であって「持ち家か賃貸か」の議論ではありません。
新築なら賃貸であっても家賃は高くなります。
これは家本来の価値より多めの住居費を払っているということで、持ち家の場合と同じです。
また、新築であっても長く住むのであれば、資産価値と負債額のバランスは関係ありません。
8)結局持ち家を買ってはいけない理由はなにか
ここまで1)~7)で持ち家否定論を否定してきましたので、「持ち家は買ってもよい。」というニュアンスになっていると思います。
しかし私も、必ずしも持ち家を買っていいという訳ではないと思います。
1)~7)で論じてきたことはあくまで長期間同じ家に住み続けることが前提の話です。
これが短期間で住み替えとなると、状況は非常に厳しくなってきます。
賃貸であれば住んだ分だけ家賃を払いますので、住んでいない期間については費用は発生しません。
しかし、持ち家であれば35年(返済期間)分を前払いしているイメージですから、35年未満で住み替える場合は住んでいない残りの期間分のお金を返してもらわなければなりません。
ここで残っている資産価値が重要になり、ローン残高以上の価値が残っている、すなわちローン残高以上の金額で売れれば、住んでいない期間分のお金が返ってくることになります。
資産価値がローン残高以下で、その額でないと売れなければ、一部しか返金されないことになります。
多少の目減りで済めばまだいいですが、全く買い手が付かなければ1円も戻ってきません。
ただ、最初から数年しか住まないと分かっていれば誰でも賃貸を選びます。
短期間しか住まない家に持ち家VS賃貸議論など生まれません。
本当に難しいのは、死ぬまで住むと決めていた家でも予期せぬ事態で住み替えが発生する可能性があるということです。
このリスクは誰にでも発生する可能性はあります。
近所に公害を発生させる施設ができる、近所の人とトラブルになる、天災に会う、子供の学校でトラブルに合う、離婚するなど。
だから持ち家はリスク、持ち家は買ってはいけないと言われるのです。
5)で「同じ家に住むなら賃貸の方が高くつく」と言いましたが、この高くついた金額は住み替えリスクに対する『保険』だと私は考えています。
なので「持ち家VS賃貸議論」は「保険要るVS要らない議論」と同じだと思います。
持ち家否定論には「家は負債だから」「家はマイナスのキャッシュフローだから」と言う人がいますが、それは本質的な理由ではありません。
「誰しも住み替えのリスクがあるから」と言った人だけが、唯一正しい持ち家否定論者だと思います。
2.住み替えリスクがあるから買うべきではない?
1)住み替えリスクはあっても必ずしも賃貸が有利ではない
持ち家を買うべきではない理由、持ち家か賃貸かの最大かつ唯一の論点は「誰しも住み替えのリスクがあるから」だと言いました。
では誰しも住み替えのリスクがあるから、家は買わない方がよいのか?
これには絶対の答えはないですね。
賃貸は保険だと言いましたが、ガン保険に例えると分かりやすいです。
誰しもガンになる可能性はあります。
ガンになる前提で考えれば保険に入っていた方がいいです。
でもガンにならないケースもあり、その場合結果論で言えば保険に入らない方がよかったとなります。
使わなかった保険料は無駄な出費になります。
家も同じです。
住み替えるかもしれないと思って賃貸で住んでいたけれど、家族皆その家とその地域が気に入って住み替える必要がなかったら、持ち家にしておけばよかったとなりますよね。
「子供が独り立ちして仕事も定年退職したら狭いマンションに引っ越すから、賃貸に住んでいた方が住み替え易い。」という意見もありますが、住み替えのタイミングが長期間元の家に住んだ後でローンもほとんど払い終わっているのであれば、持ち家が廉価でしか売れなくてもほとんど損はない訳です。
逆にそこから先同じ家に住み続ければ、賃貸で家賃を払い続けるよりもはるかに安いです。
「夫婦2人だけになると子供と住んでいた家は広すぎるから」と言いますが、広すぎるけど家賃のかからない家と、ちょうどいい広さだけど家賃のかかる家と、どちらがいいかという話です。
広すぎると掃除が大変だからとも言いますが、こじつけかなと思います。
2)賃貸だから失敗しないとは言えない
賃貸派のお金系YouTuberで「私の実体験として持ち家を買って失敗したから。住み替えの時に売れなかったから。」と言う人がいます。
もしかしたら持ち家のリスクの本質を突いた話かもしれません。
でも、ただ単にあなたの管理能力が低いだけでは?とも思います。
持ち家を買って途中で売った人の中にも、大して損をしなかった人もいます。
買うタイミングや買う場所、家の仕様などを考えて買えば必ずしも失敗するとは限りません。
また売るタイミングも重要ですので、急いで売らなければならない状況を作らない努力も必要です。
確かに持ち家は、そのようなことを注意して買わなければならないこと自体がデメリットかもしれません。
しかし、本当に管理能力の低い人であれば、賃貸に住んでも失敗する可能性はあります。
家賃相場10万円なのに15万円の家賃を払って住み続ければ完全に失敗ですよね。
3)賃貸派優勢の違和感
持ち家VS賃貸はどちらもメリット・デメリットがありますが、最近のお金系動画を見ていると賃貸派が優勢に見えます。
それも素人YouTuberばかりではなく、お金に強い有名人も賃貸派が多いように見えます。
しかし、持ち家を持ちたいと思っている人は、この状況にどこか違和感を感じませんか?
その違和感は、賃貸論者のステータスの偏りから来ていると思います。
動画などで賃貸を勧めている人を見ると、芸能人、実業家、経営者、フリーランス、YouTuber、独身、子なし既婚者の人が多いと思いませんか?
この記事では住み替えに対しては賃貸の方が有利と言っていますが、上記のステータスの人は恐らく住み替えが多いです。
多いと言うか、自由に拠点を変えられることを必要としているし、そのような状態を望んでいます。
そのような人が賃貸を好むのは当たり前です。
トップYouTuberが家賃100万円超の都内のタワーマンションに住んでいたりしますが、いくら稼いでいるからと言ってそんな家を持ち家で購入する人はいないと思いますし、ほとんどの日本人はそのような世界とは無縁です。
妻子がいる会社員・公務員は決まった拠点を持つということにも必要性を感じます。
別に会社員・公務員が正しいという話ではなく、多数派の人からすると配信する内容が偏り過ぎているということです。
日本はこれから終身雇用は崩壊すると言われており、私もそれはそれでいいとは思います。
でも、今のところは崩壊していないと思いますし、恐らくそのままの会社に残った方が将来の期待値が高いという人の方が多いのではないかと思います。(私の感覚ですが)
それに仮に転職が活発化したとして、必ずしも家を住み替える必要があるでしょうか?
地方に住んでいて車通勤を基本としているなら、職場が変わっても影響は少ないと思います。
都市部で電車通勤前提だったとしても、本当に転職市場が活発化するならその時の自宅から通える転職先の選択肢も増えていると思います。
独身なら家を変えてでもいい転職先に移ればいいし、子供が地元の学校に通っているのであれば、今の家から通える範囲で転職先を探してあげればいいのではないでしょうか。
持ち家が向いている人もいれば賃貸が向いている人もいると思いますが、何人かのインフルエンサーの言葉だけに引っ張られるのではなく、本当に自分がどちらに向いているかよく考えることが必要だと思います。
3.最後に
今回の話をまとめると、持ち家を買ってはいけない理由は、
「誰しも予期せぬ住み替えのリスクがあるから。」
です。
持ち家を検討する際はこのリスクを考えなければいけません。
よく言われる、「持ち家は負債だから。マイナスのキャッシュフローだから。資産価値が下がるから。」と言うのは本質的な理由ではないと思います。
そもそもですが、持ち家VS賃貸議論に決着がつかないのは当たり前ですよね。
将来のことは誰にも分からないので、確実に正解を選ぶことはできないからです。
将来のことが分かれば議論する必要がありません。
誰にも分からないから、人それぞれの確率で議論し続けるのです。
今回、思っていることを文章にしてみようと思ったら、つい長文になってしまいました。
何度も言いますが、私は賃貸を否定している訳ではありません。
持ち家がいいか賃貸がいいかは本当に人によると思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
筆者(やんとも)とこのブログについての紹介です( ^ω^)b
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