ヒートポンプって何?何がすごいの?どんな仕組み?【解説】
こんにちは、やんともです。
中古戸建てを購入しマイホーム生活を始めました。
家や家電に関する話題で「ヒートポンプ」という単語をよく耳にします。
皆さんこのヒートポンプって何か説明できますか?
暖めたり冷やしたりする装置なんでしょうけど、何が特別で何がすごいのでしょうか?
そしてどんな原理で動いてるのでしょうか?
理系男子( )の私がいつもの記事とは趣旨を変えて、「ヒートポンプ」について解説してみたいと思います。
1.前置き
2.ヒートポンプは何が特別なのか・何がすごいのか
■熱を生み出す他の電気機器とは原理が異なる
■自然現象ではありえない「温度の低い所から高い所へ熱を移動させる」
■ヒートポンプが生み出す高いエネルギー効率
3.ヒートポンプの原理
■ヒートポンプの原理まとめ
4.ヒートポンプを使った電化製品
5.私がヒートポンプを理解するまでに年月を要した話
6.最後に
1.前置き
世の中には家電だったりもっと大きな設備だったり、電気エネルギーを元に動く機械がたくさんあります。
それら機械がする仕事の種類は、
・光を放つ
・音を出す
・動力を生み出す
・温度を上げる
・温度を下げる
・計算する
・電波を発する
など様々です。
これら仕事の種類の中で、仕事を実行する上での難易度が意外と高いのが「温度の上げる・下げる」、特に「温度を下げる(冷やす)」です。
原子時代を想像してみてください。
細かい制御は無視するとして、上記の仕事の種類のうち原始時代でもできることは何でしょう。
パソコンやスマホのように計算したり電波を放ったりは当然できません。
しかし、光を放つことはできます。炎を灯せばよいです。
音を出すこともできます。声を出してもいいし、物を叩いてもいいです。
動力も得られます。人間の力を使ってもいいし、重力を使ってもいい。
温度に関しても温度を上げる・熱を発することはできます。火を使ってもいいし、摩擦熱などを利用してもいいです。
では温度を下げる・冷やすことはできるでしょうか?
何か温かい物をキンキンに冷やしたい時。
うちわのようなもので扇いでも周囲の気温以下には冷えません。
水で冷やしても水の温度以下にはには冷えません。
氷で冷やす?
氷はどこから持ってくるのでしょうか?
寒い地域でなければ原始時代に氷はありません。
そうです。自然の物理現象の中で温度を下げるというのは非常に難しいことなのです。
しかし現代では、冷蔵庫やエアコンなど、温度を下げるということに成功しています。
それは原始時代からすればかなりすごいことです。
そしてそれを可能にしているのがヒートポンプです。
ヒートポンプは冷蔵庫、エアコン、乾燥機、電気給湯器などに使われています。
温度を上げたり下げたりする装置です。
もう少し正確に言えば、「温度の低い所から高い所へ、熱を移動させる装置」です。
それの何がすごいのか、次章で解説します。
2.ヒートポンプは何が特別なのか・何がすごいのか
熱を生み出す他の電気機器とは原理が異なる
「冷やす」ことが難しいということは、前章で何となくわかって頂けたかと思います。
一方で「暖める・温める」ということはヒートポンプでなくてもできます。
例えば、石油ストーブ、暖炉、窯、電気ストーブ、ハロゲンヒーター、IHヒーター、電子レンジなど。
石油ストーブや暖炉は、灯油や薪などの物質が持つ化学エネルギーを熱エネルギーに変えています。
ハロゲンヒーター、IHヒーター、電子レンジなどは電気エネルギーを熱エネルギーに変えています。
(電気エネルギーを熱エネルギーに変える原理はそれぞれ全く異なるので、本当は一括りにするものではありませんが。)
ヒートポンプも物を温めるために使用することもありますが、上記の機械とは異なり、電気によって稼働しますが、電気エネルギーを熱エネルギーに変えることはしません。
ヒートポンプにおいて電気が行っていることは「温度の低い所から熱を奪い、温度の高い所に放出する。」ということです。
ヒートポンプによって物を温める場合、その熱は他の温度の低い所から奪ってきています。
ヒートポンプによって物を冷やす場合は、その逆で、冷やしたいものから熱を奪わせて、他の温度の高い所に捨てているのです。
ヒートポンプが特別なのは、この「温度の低い所から熱を奪い、温度の高い所に放出する。」という概念の部分です。
これがどう特別なのか。
自然現象ではありえない「温度の低い所から高い所へ熱を移動させる」
ヒートポンプは温度の低い所から高い所へ熱を移動させますが、これが逆ならとても簡単なことです。
熱を温度の高い所から低い所へ移動させることはごく普通の自然現象です。
以下の図のように室内の空気の温度が高いA室と温度が低いB室があり、この2室を密着させます。
A室の空気は沢山の熱を持っており、B室の空気は少量の熱を持っています。
A室とB室の間が断熱されていないと、A室の熱はB室へ移動します。
A室の温度は下がり、B室の温度は上がり、やがて同じ温度になって落ち着きます。
熱は必ず温度の高い所から低い所に移動します。
物は必ず高い所から低い所に落下し、自然に低い所から高い所に物が動くことは絶対にありません。
これと同じぐらい絶対的なこととして、熱は温度の高いところから低い所へ移動します。
そして、いずれ両室の温度が同じになり、温度の高低差がなくなったら、それ以上は熱はどちらにも移動しなくなります。
とにかく、熱は高い所から低い所へ移動するということが本日の肝です。
ヒートポンプに話を戻すと、ヒートポンプは上記の自然現象の逆をやろうとしているのです。
温度の低いB室の熱を温度の高いA室へ移動させる。
自然現象ではあり得ないことです。
原理は次章で説明しますが、このあり得ないことをやってのけたことがヒートポンプのすごいところなのです。
ヒートポンプが生み出す高いエネルギー効率
概念としてヒートポンプがすごいことは説明しました。
が、そんなことは置いといて、ヒートポンプを使った製品を使うユーザー目線で、実績値としてヒートポンプのすごいところをお話しします。
ヒートポンプを使った製品の1つにエコキュートという電気給湯器があります。
一方、給湯器と言えばガス給湯器もあります。
最新のガス給湯器エコジョーズはエネルギー効率が約95%だそうです。
これはものすごい数値だと思います。
従来ガスを燃やして熱を生み出して水を温めようとした場合、水以外の余計なものを温めたり、余計な光を放ったりして、ガスが持つエネルギーの100%を水に与えることはできません。
しかし、最新のエコジョーズは100%に近いエネルギー効率を実現しているのです。
対してヒートポンプ式のエコキュートのエネルギー効率はどうか。
最も効率のいいものだと350%だそうです。
先ほどエコジョーズの95%はすごいと言いましたが、それをはるかに超える驚愕の数字を叩き出しました。
(と言っても、実際に家庭で使用してこの効率は出ないと思いますが。)
そもそも、なぜエネルギー効率が100%を超えることができるのでしょうか?
それは上でも説明した通り、電気のエネルギーを熱エネルギーに変えている訳ではなく、外気(温度の低い所)が持つ熱エネルギーを水に与えているからです。
電気は外気から水へ熱エネルギーを運ぶ役割、まさに“ポンプ”を動かすために使っているに過ぎないからです。
外気からはほぼ無限に熱エネルギーを奪うことができるので、そのエネルギーを上手く水に与えることができれば100%を超えるエネルギー効率を実現できるのです。
だからヒートポンプは「効率がいい」「省エネ」「電気代が安い」と言われるのです。
3.ヒートポンプの原理
前章までで「ヒートポンプは温度の低い所から高い所へ熱を移動させる」と言う事と、「それは自然界ではあり得ないことを実現している」と説明しました。
ではそのあり得ないことをどのように実現しているのか。
ヒートポンプの原理をお話しします。
先ほどと同じように温度の高いA室と温度の低いB室があります。
A室の気温を25度、B室の気温を15度とします。
自然現象では熱はA室からB室へ移動します。
ヒートポンプはこの逆でB室からA室へ熱を移動させようとしています。
エアコンの冷房に当てはめて、A室を熱い夏の外気、B室を冷房の効いた涼しい室内と考えてもらうといいです。
もしくは、逆に暖房に当てはめて、A室を暖房の効いた温かい室内、B室を寒い冬の外気と考えてもらってもいいです。
ヒートポンプは下のように回路状になった配管が2つの部屋に跨ってあります。
この中を作動流体と呼ばれる気体が一方通行に循環しています。
エアコンガスはこの作動流体の一種です。
そして、この配管上に
①エバポレータ(熱交換器)
②コンプレッサ(圧縮機)
③コンデンサ(熱交換器)
④減圧機
と言う4つ装置があります。
今、配管上のアの部分に5℃の作動流体が入っているとします。
この作動流体がイまで移動する途中で①エバポレータ(熱交換器)を通過すると、作動流体はB室の空気と熱の授受を行います。
ここでB室の温度は15℃でアの作動流体の温度5℃より高く、熱は必ず温度の高い所から低い所に移動しますので、熱はB室の空気から配管内の作動流体へ移動します。
これでB室の熱を奪うことができました。
あとは奪った熱をA室に放出すれば目的達成です。
しかし、B室から熱をもらった後のイの部分の作動流体の温度は、どんなに高くても15℃です。
一方A室の温度は25度ですので、A室の空気とこの作動流体で熱交換をしたら、A室から作動流体へ熱が移動してしまいます。
そこで活躍するのが、②コンプレッサ(圧縮機)です。
イの作動流体はウへ移動する途中で②コンプレッサを通り圧縮され、温度が上がります。
なぜ圧縮されると温度が上がるかは説明すると長くなるので割愛しますが、気体の分子運動が激しくなり温度が高くなると言うことだけ知っておいてください。
②コンプレッサで圧縮されたウの作動流体の温度は35℃まで上がります。
その状態でエまで移動する途中で③コンデンサ(熱交換器)を通過しA室の気体と熱交換をすると、今度は作動流体の方が温度が高いので、熱は作動流体からA室の空気へ移動します。
これでB室から奪った熱をA室へ放出することができました。
これで目的は達成しました。
と言いたいところですが、これで終わる訳にはいきません。
A室へ熱を放出した後のエ部分の作動流体を①エバポレータまで回して、再度B室の熱を奪わせなければなりません。
ここで③コンデンサを通過した後のエの作動流体の温度は、どんなに低くても25℃です。
このまま①エバポレータへ行ってもB室の熱を奪えず、逆に作動流体からB室の空気へ熱を放出してしまいます。
そこで最後に役に立つのが④減圧機です。
こちらは②コンプレッサと逆で、作動流体を膨張させ圧力を下げて温度を下げます。
圧縮と逆で膨張させると流体の温度は下がります。
④減圧機を通過した作動流体はアの部分で5℃となり、再度スタートに戻って同じサイクルを繰り返します。
これで、作動流体が配管内を循環することで、B室の熱をA室へ移動し続けることができるのです。
そして、ヒートポンプが電力を消費するのは②のコンプレッサです。
自転車のタイヤに空気を入れる際に体力を消耗するのと同じように、流体を圧縮するためにはエネルギーが必要です。
電気でコンプレッサを動かして作動流体を圧縮させます。
④減圧機は逆に高圧の流体を膨張させますので、外からエネルギーを加えなくても勝手に膨張してくれます。
エバポレータやコンデンサもただの熱交換器ですので、電力(エネルギー)は必要ありません。
作動流体がそこを通過することで熱の交換が行われます。
ヒートポンプの原理まとめ
ポイントをまとめると、
- 作動流体が配管内を循環しながら、温度の低いB室の気体から熱を奪い、温度の高いA室の気体へ熱を放出する。
- A室へ熱を放出するためには、作動流体はA室の気温より高い温度である必要があるため、コンプレッサで圧縮して温度を上げる。
- B室から熱を奪うためには、作動流体はB室の気温より低い温度であある必要があるため、減圧機で膨張させて温度を下げる。
- コンプレッサで電力を消費する。
と言うことです。
4.ヒートポンプを使った電化製品
上記で原理を説明したヒートポンプは、熱(温度)に関わる多くの家電に使われています。
最も分かりやすいところがエアコンです。
エアコンを設置する際に壁に穴を開けて通すホースは上記の作動流体の配管です。
エアコン屋さんが補充するエアコンガスは作動流体です。
室外機は、冷房の時はコンデンサの役割、暖房の時はエバポレータの役割です。
これにより、夏場は室内の温度を下げ、冬場は室内の温度を上げることができるのです。
冷蔵庫も昔からヒートポンプが使われています。
冷蔵庫の作動流体は冷媒ガスなどと呼ばれます。
昔はフロンガスが使われていましたが、オゾン層破壊の原因になることから、今はプロパンガスに似た気体が使われています。
エコキュート(電気給湯器)もこの原理を使って高効率でお湯を沸かすことができます。
外気との熱交換のためにエアコンの室外機に似た装置が付いています。
ドラム式洗濯乾燥機もヒートポンプで空気を温め、衣類を乾燥させます。
5.私がヒートポンプを理解するまでに年月を要した話
以下は完全に余談です。
私がヒートポンプという装置をちゃんと認識したのは高校の物理の授業でした。
ちゃんと習ったというより、教科書の1ページの半分ぐらいにおまけレベルで書いてあっただけです。
しかも、ちゃんと原理などが説明されている訳でなく、「ヒートポンプはエンジンの逆の原理」という分かりづらい表現をされていました。
私は高校時代、物理の成績はかなり良かったですが、ヒートポンプの原理だけは卒業するまで理解ができませんでした。
「エンジンの逆の原理」と聞いて意味が分からないと思いますが、大雑把に説明すれば、
エンジン :熱(ガソリンの燃焼)から動力(回転)を得る
ヒートポンプ:動力(コンプレッサの稼働)から熱を得る
ということです。
当時(17年ぐらい前)はネットで何でも調べられた訳ではありませんし、おまけレベルの話を細かく説明した参考書はありませんし、友達もおまけの話に興味はないし、先生も実はよく分かってないし、とにかく理解できませんでした。
高校を卒業した私は理系の大学へ進みますが、それでもやっぱりヒートポンプについて理解できません。
大学の教科書や教授は、そもそも丁寧に教えようというつもりがありません。
そんな感じで高校の頃から5年ぐらいヒートポンプのことを理解しようとして、頭の中で色々考えていたある時「あっ、そういうことか。」と突然上記の原理が頭の中で整理でき、理解することができました。
もう一度言い訳をしておきますと、当時は丁寧に解説してくれる参考書やネットの記事は簡単には手に入りませんでした。
この記事では私なりに誰にでも分かるようにヒートポンプを解説したつもりですが、どうですかね?
6.最後に
今回はいつもと違ってちょっと物理学の解説をしてみました。
家電や家を買ったり建てたりする上で特に知らなくてもよいことですが、ちょっと知っておくとスッキりして機器を選んだりできるのではないかと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
筆者(やんとも)とこのブログについての紹介です( ^ω^)b
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